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元気なウサミミに、曳野も安心した。
「無理するな」
「平気です。所長も私とほぼ同時にここへたどり着いたんですね。助かりました」
曳野はウサミミに謝った。
「ごめんな。実は、別れた振りして、ウサミミのあとをつけていたんだよ」
「そうだったんですか。全く、気が付かなかったです」
「ノラ猫にまで聞いているから、のん気だなーっと、思いながら見ていた」
「見ていたんですか!」
ウサミミは、恥ずかしさで真っ赤になった。
「こいつは、僕らが一人になるのを待っているんじゃないかと考えて、別々に捜すことを提案したんだ。裏でコソコソ動く卑劣な奴だから、きっと待ち伏せして何かやると思っていた」
「卑劣だと!」
統は、曳野の言葉に腹を立てた。
「ああ、卑劣だ。この上なく、最高に卑劣だ」
曳野が必要以上に煽るので、統の顔はみるみるうちに頭に血が上ったが、これ以上歯向かうことはなかった。
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