一両目 忘れ物

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 元気なウサミミに、曳野も安心した。 「無理するな」 「平気です。所長も私とほぼ同時にここへたどり着いたんですね。助かりました」  曳野はウサミミに謝った。 「ごめんな。実は、別れた振りして、ウサミミのあとをつけていたんだよ」 「そうだったんですか。全く、気が付かなかったです」 「ノラ猫にまで聞いているから、のん気だなーっと、思いながら見ていた」 「見ていたんですか!」  ウサミミは、恥ずかしさで真っ赤になった。 「こいつは、僕らが一人になるのを待っているんじゃないかと考えて、別々に捜すことを提案したんだ。裏でコソコソ動く卑劣な奴だから、きっと待ち伏せして何かやると思っていた」 「卑劣だと!」  統は、曳野の言葉に腹を立てた。 「ああ、卑劣だ。この上なく、最高に卑劣だ」  曳野が必要以上に煽るので、統の顔はみるみるうちに頭に血が上ったが、これ以上歯向かうことはなかった。
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