一両目 忘れ物

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「ただいま、……って、何があった!」  泣いているウサミミとミチルを見て、もしかして、二人でいる間にとんでもないことがあったのかと心配した。  変な誤解を与えてはいけないと、ウサミミは慌てて涙を拭いた。 「あ、おかえりなさい。なんでもないです。」 「ウサミミ、僕が留守の間に何かあったのか?」 「いえ、本当になんでもないんです。二人の間のことですから、所長は心配しないで大丈夫です」  涙の原因が千路にあるなどと、知られたくない。  ミチルは、黙っている。 「コーヒーを淹れますね」  立ち上がると、流しに向かった。  ミチルも涙をティッシュで拭くと、曳野に頭を下げた。 「お邪魔しています」 「本当に、何もなかった?」 「はい。所長さんって、とっても優しいんですね。こんなに心配してくれるなんて、嬉しいです。ウサミミが羨ましい」  ミチルは、自分たちを心配してくれている曳野にまだ弱弱しい笑顔を向け、曳野は照れくさそうに笑った。 「犯罪絡みでなかったなら良かった。職業柄、つい悪い方向に想像してしまうんだ。悪い癖だな」  泣いていた理由を聞かないほうがいいのだろう。  曳野は、これ以上の追及をやめた。
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