16・失う力

23/27
前へ
/319ページ
次へ
自分がもうどんな顔をしているかなんて分からなかった なんて酷い言葉だろう 秀の気持ちを知っている俺が……一番言ってはいけない言葉 拒絶するより残酷だ…… でも、ひとつ気付いた 素直に秀の気持ちを受け入れられない理由────── 「…………自信がない……」 独り言の様に呟いたその言葉は、紛れもない真実だ 秀が……何で俺を好きになってくれたのか分からない 昔は俺が居なきゃダメだった、ひどく人見知りで消極的だった秀を引っ張ってきたのは俺だ でも今は? 何もかも逆になってる わざわざ俺が手を引かなくても、秀は自分の道を進める 友達の輪に誘わなくても、人と渡り歩ける それなのに……異世界でも、現実でも秀が居なきゃ俺には何も無い 何も出来ない 秀に好きでいてもらえる自信なんか無い 男同士って所より、今はそれが大きい なんとか前向きに考えたいのに、秀を好きになる度に汚くなる…… 少しの余裕でさえ消える 「………自信が無いって……何にだ…?」 秀の声に勝手に自分の肩が揺れる、蔑まれている訳でもないのに辛くなる 「俺………このまま秀の隣にいていいのかな?」 「………おい秀人!?」 くらくらする 考え過ぎて?……違う、異世界に呼ばれてるんだ だけど……… 俺はこのまま……秀の番でいる事は許されるんだろうか? ゆっくり眠りへと誘われると同時に、どうしようもない焦燥感が襲った

最初のコメントを投稿しよう!

642人が本棚に入れています
本棚に追加