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熱を孕んだ琥珀が揺れる度に俺の理性も揺れて壊れそうになる。
閉じられた窓の外、また花火の音が聴こえた。
「───懐かしいな」
目の前の小さな唇を啄んでふっと笑うと、聖也が不思議そうに小首を傾げた。
「ほら、祖母ちゃん達の田舎の夏祭り。あの時…勝手に嫉妬して、置き去りにして悪かった」
困ったように聖也が笑って、吐息が唇に掛かる。
「あれは僕も、間違ってた。二人を引き離すんじゃ無くて、近付けないようにずっと兄さんの傍にくっついてるべきだったんだ」
「……今度は、二人で行こうな。花火」
そう云って後ろ髪を撫でながら軽く唇を重ねれば、肩に乗せられた腕に力が入り首に獅噛み付く。
再び熱の篭った瞳が射抜くように見つめてくる。
「………ねえ、兄さん……足りない……もっと兄さんが欲しい、よ…」
「だってお前、まだ腰に負担掛ける訳には……」
肩口に顔を埋めて擦り付けるように頭を振る。
細い髪が耳を首筋を撫でて擽ったい。
「だって…っ、不安なんだ、怖いんだ、……また兄さんが急に居なくなるんじゃないかってっ、だからお願い…っ」
「………聖也……」
体ごと獅噛み付いてくる聖也の震える声に、どれだけ深く傷付けたかを思い知らされる。
俺が逃げている間、こいつはずっと俺だけを想って傷付いていた。
絡み付いた腕をそっと外せば、今にも泣きそうに大きな二つの琥珀が揺れる。
ゆっくりと抱き上げて、華奢な体をベッドに寝かせた。
「もう絶対に何処にもいかない。ずっとお前と一緒にいる」
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