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「“何もしない”からだろう?期待に応えられないなら、初めから誰も選ばないか、誰か一人に決めればいい」
それが出来るなら、こんなに自堕落に生きてなどいない。
付き合ってくれと云われれば、その時他に女が居なければ特に断る理由も無い。
抱いてくれと望まれれば抱くし、退屈な買い物や映画とかも余程気が乗らない時以外、時間が空けば付き合う。
それ以上を望まれても応えられないものはしょうが無い。
ましてや相手が向けるのと同じだけの好意を返して欲しいなど、迷惑以外の何ものでも無い。
自分がどんなに酷い人間かなんて、自分自身が一番良く解っている。
こんな俺に期待するだけ無駄なのに。
軽く唇を重ねて、整った顔が間近で妖艶に微笑む。
「そろそろ、私だけのものになってはどうだ…?」
「……先生だって、俺だけじゃ無いでしょう…?」
ふっと笑って俺を映す漆黒の瞳を見つめ返した。
その瞳が時折遠くを映し、翳りを帯びる事には気付いていた。
その瞳の先に居るのが、過去の恋人なのか海の向こうに残して来た想い人なのかなんて知らない。
もしかすると先生は、俺にその人を重ねているのかも知れない。
だけどそんな事、俺にはどうでもいい。
この人を愛する事なんて、絶対に無いのだから。
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