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「クリスマスもお正月も此処で過ごすのって、やっぱりヤだなぁ」
看護師さんが出て行って、聖也が溜息混じりに零す。
「クリスチャンでも無いのに、クリスマスとかどうでもいいだろ」
「もー兄さん相変わらずなんだから。そういうのは雰囲気なの。街のイルミネーションとか、見てるだけでわくわくするでしょ」
拗ねたような顔が幼くて、思わず笑みが零れる。
「そんなもんか?クリスマスは兎も角、年越しは泊まり込んでやるよ」
「ほんと?!じゃあ一緒に新年迎えられるんだね?!」
ぱあっと瞳を輝かせて嬉しそうに笑う聖也に、少し意地悪く笑って見せた。
「けどお前はまだ安静状態なんだからな?カウントダウンはお預けな?」
急にしょげ返る聖也に吹き出すように笑って、頭を撫でる。
「この部屋、東向きだし、初日の出は見られるんじゃないか?」
また聖也が嬉しそうに笑う。
ころころ変わる表情を見ていると、何だか昔に戻ったみたいで嬉しくなる。
ついこの間まで、こんな風に笑い合えるなんて思ってもいなかった。
こいつのこんな笑顔なんて、もう二度と見れないと思っていたのに。
「ね、兄さん」
不意に、熱を孕んだ瞳が俺を射抜く。
ついさっきまでの幼さが消えて、妖艶な表情に囚われて動けなくなる。
「兄さん、………好き。大好き……」
ベッドに腰掛けて、引き寄せられるように唇を重ねる。
体に負担を掛けないようにベッドに片手を付いて、もう片方の手で頬を撫でながら舌を差し入れる。
甘い甘い、聖也の香り、味。
それら全てを味わうように、ゆっくりと時間を掛けて丁寧に口の中で舌を動かす。
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