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小さな右手がセーターの袖をきゅっと掴む。
無理させてはいけないと解ってはいるけれど、ぎこちなく絡み合う舌が理性を剥ぎ取りそうになる。
「は、ぁ……ふ…っ」
僅かに残った理性を掻き集めて、ゆっくりと舌を引き抜き最後にぺろりと紅く染まった唇を舐めて距離を取った。
「…………続きは、回復してからたっぷり、な」
耳朶に唇を寄せて囁やけば、一瞬で白い肌が朱に染まった。
「兄、さ…っ」
恥ずかしそうに潤んだ瞳を揺らす様子が可愛くて。
「だから早く元気になれ」
今直ぐにでも、お前が欲しくて堪らないのだから。
その夜は、両親が来る前に病室を出た。
家族揃って居なくなれば寂しさも増すと思ったから。
それに今夜の内に、両親にちゃんと話しておきたかった。
俺の本当の気持ち。
俺達兄弟の今後の事。
でもいざとなるとやっぱり怖くて、一人で気持ちを落ち着ける時間が欲しかった。
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