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父の車で両親が帰宅したのは、日付が変わる少し前だった。
遅い夕食を摂る両親の近くに座り、深夜番組を観るとは無しに観ながらタイミングを窺う。
名前も知らない出演者達の笑い声がやけに煩く耳を突く。
食後のお茶を飲み始めた両親に向き直り、俺は真剣な顔で口を開いた。
「二人に聞いて欲しい話があるんだ」
テレビの中の声なんてもう何も聴こえない。
全身が心臓になったかのように鼓動だけが煩く騒ぐ。
「俺も、聖也が好きだ。兄弟としてではなくて」
母さんには何も云われなかったって云ったけど、本当は看病に来た時あいつに気持ちを打ち明けられた事。
それじゃいけないと、あいつには普通に彼女を作って結婚して幸せな家庭を持って欲しくて、その後ずっと突き放して避けてた事。
だけど本当は、ずっとあいつの事を弟としてでは無くて好きだった事。
諦められなくて、ずっと心の奥で燻っていた気持ち。
静かに、けれどはっきりと話した。
「……最後にあいつに会った時、酷い事を云って突き放した。俺の事なんかもう諦めて欲しくて。もう二度と会わないつもりで。俺の知らない所で幸せになって欲しくて。
けど事故の時、あいつが居なくなるんじゃないかって思ったら、無性に怖くなって。
二度と会わないって決めたのに、会えなくなるって思ったら怖かったんだ。
……それで自覚した。やっぱり俺はあいつが好きで、この気持ちを諦める事も誤魔化す事ももう出来ないって。
倫理的にいけない事だって解ってる。二人に迷惑掛ける事も悲しませる事も、軽蔑されるかもって事も。
けどあいつじゃなきゃ駄目なんだ。あいつ以外好きになんてなれない。
ごめん。父さん母さん。親不孝な息子でごめん」
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