罪と罰

決意

二人共表情を変えず、ただじっと静かに俺の話を聞いていた。

「……あんた付き合ってる子が居るって云ってたけど」

「会ってちゃんと話した。これからも友達でいようって、云ってくれた」

母さんの静かな問い掛けに、真っ直ぐに目を見て答える。

「それがあんたの本当の気持ち？同情とか同調とかじゃなくて？」

その言葉に大きく頷いた。

以前聖也の話をした時、母さんは物分り良過ぎる事を云っていたけれど、流石に俺もとなれば叱られるか呆れられるか位は覚悟していた。

けれど。

「あんた達が本気だって云うなら、何も云う事無いわ。云ったでしょ？あんた達が幸せなら私達はそれでいいの。子供は親に迷惑掛けるのが当たり前。そんなの気にしてたら親なんてやってらんないわ。ね、お父さん」

「そうだな。私達の事など、何も心配する必要は無い。……ただ」

父さんの言葉を母さんが引き継ぐ。

「世間はそう甘くない。差別や中傷を受ける事もあるだろうし、仕事や人間関係で大きな障害になるかも知れない。その覚悟はある？」

もう一度はっきりと頷く。

そんな覚悟ならもう出来ている。
あいつと一緒なら、どんな状況にだって耐えられる。
共に地獄へと云ってくれたのだから。

「そ。ならいいの。あんた達が大事な息子って事に変わりは無いし」

二人がにっこりと破顔する。

「嫁姑の面倒臭い心配が無くなったと思えば気が楽だわ」

なんて母さんが笑って。

「母さんずけずけ云うからな。嫁になる子は気の毒だと思ってたよ」

と父さんが苦笑いして。

俺も泣きそうな顔で笑って。

この人達の子供で良かったと、心からそう思った。