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大晦日は母さんは夜勤で、遅い時間に父さんが病室に蜜柑を持って来てくれた。
一緒に年越しするんだと云い張る聖也を軽く叱って、日付が変わる前に狭いベッドに一緒に横になって。
手を繋いで眠った。
夜明け前に起きて、窓から見える初日の出を見ながら笑みを交わして。
「明けましておめでとう」と云い合って唇を重ねた。
冬休みが終わり、俺は自分の部屋に戻った。
二月には聖也の容態もすっかり安定して、何度か行われた検査にも異常は見られず四人部屋へと移った。
春休みが終わって俺は四年になり、五月、やっと肩と足のギプスも取れて、まだ腰のコルセットも通院も必要だけど聖也は退院した。
俺は休みの度に家に帰り、夜は抱き合って同じベッドで眠った。
一人の部屋で眠っても、もう夢に魘される事も無い。
今までの数年間が嘘のように穏やかに日々は流れていった。
就職活動は、実家から通える企業に絞った。
本格的な内定は秋になってからだけど、取れるだけ取った資格のお陰で何社からも良い手応えを貰った。
そして夏休みに入った。
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