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高柳先生の最初の講義は、女子学生を中心に希望者が殺到した。
元々同じ専攻の教授の講義を取っていた学生が優先され、俺と藤井は講義を受ける事が出来た。
と云ってもその教授の講義を俺が選んだ動機は至極不純なもので、課題と出欠に煩くない教授だと聞いていたからだった。
俺にとっては、専攻どころか学部でさえ何だって良かった。
必死に高校生活を犠牲にして、この大学のこの学部を目指し受験に死に物狂いで臨んで落ちた生徒に申し訳無いくらい、下らない理由で選んで運良く受かってしまっただけのとことんやる気の無い生徒だった。
それは今でも変わらず、最低限単位を落とさず四年で卒業出来さえすれば、後はどうだっていい。
ただ学費を出してくれた親の為だけに通っているようなものだ。
高柳先生と体を繋げるようになったのは、三回目の講義の後だった。
その日の講義に使った資料を片付けるのを手伝ってくれと頼まれ、二人きりの研究室でいきなり唇を奪われた。
驚きはあったものの、抵抗は無かった。
と云うより、どうでも良かった。
誰を抱いても、誰に抱かれてもどうせ何も感じない。
満たされる事なんて初めから望んではいなかった。
全てを焼き切って、いっそ誰かが壊してくれる事だけを俺はずっと、望んでいた。
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