許されない罪と相応の罰

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弟のあんな顔、初めて見た。 何度か偶々聞いてしまった告白の現場、いつも丁寧に申し訳無さそうに、色々な理由を付けて断っていた。 あんな露骨に嫌そうな顔をあいつがする事があるなんて、知らなかった。 だけどそんな事よりも。 「………兄さん」 いつものようにノックもせずに、けれど静かにドアが開かれた。 遮光カーテンの引かれた真っ暗な部屋に、廊下からの明かりが入る。 静かにドアが閉められ、再び部屋に闇が戻って来た。 今の俺の心と同じ。 弟の気配が近付く。 今俺に近付くな。 話し掛けるな。 何を云ってしまうか分からない。 なのに弟はベッドの端に腰掛けた。 マットが微かに軋む。 「兄さん………寝ちゃった…?」 必死に寝た振りを決め込む事にした。 息を詰めて、枕に顔を埋めたままぎゅっと硬く瞼を閉じる。 早く。 早く出て行ってくれ。 でないと。 「………制服、脱がないと……皺になっちゃうよ……ねえ」 制服なんかどうでもいい。 なのに弟は俺よりもずっと細い腕で、俯せになった俺の体の向きを変えようと、体ごと俺の背中にくっ付いて腕に力を入れる。 昔より少しだけ低くなった、けれど暖かな体温。 手は俺の体よりも少し冷たい。 心臓が壊れてしまった沢山の歯車のように、軋んで乱れた音を立てる。 「───う……ん…」 これ以上触れられていたくなくて、俺は今起きたかのように緩慢に仰向けになって眉を顰めて目を開けた。 「起こしちゃってごめん。制服、脱がないと……」 薄闇に、困ったように眉を下げる弟の顔が近くに映る。 その片頬が薄っすらと紅くなっていた。
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