擦る女

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 しばらくもしないうちにNは大学に来なくなり、連絡も通じず彼とは疎遠になった。彼を知る友人たちは不思議そうにしていたし、僕にも何かあったのかと尋ねてきたが、あえて知らないふりを続けた。  そのうち僕も段々と講義を休むようになって、後期が始まって間もなくの頃、大学を中退した。  あれ以来、擦る音――とりわけ滑らかな面を擦るあの細く甲高い音と、窓が怖い。そして時折、Nのことを思い出す。彼はどうしているだろうかと。  僕は自室の窓に新聞紙を張っている。
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