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加藤詩織side
藤田虎泰が左の壁に向かうのを横目に見ながら、反対側の壁に向かう。
そこに迷いなんてものはなかった。
直感的にタイルの場所が何処にあるのかが理解出来たからだ。
ーーこのふざけたゲームを一刻も早く終わらせるんだ。
走りは決して得意ではなかったが今までにない強い力で地面を蹴った。完全に意識の方向を定めると同時に耳を貫いてやまなかった人々の怒声や悲鳴が遮断され、無音の世界に包まれた様な感覚に陥った。
私は。
昔から、勘が鋭かった。
物事を理論的に判断したがる性格のせいで日常生活でそれに頼ることはまずないし、自分自身、何か没頭することを見つける度にその事実を思考から消去していたため意識的に使う機会は人生においてほとんどなかった。
ーー今、使わずに、いつ使う。
自分の不器用さが嫌になる。
柔軟性がない。自分の意見が曲げられない。
言葉選びが鋭い。直ぐに自分の感情が先行する。
卑屈。矮小。頑固。内向的。性格の悪い、否定野郎。
自分の底意地の悪さを自覚している。
ーー見つけた。
桐谷の噂、流したのは私じゃない。
でも、知っていて止めなかったのは私だ。
さっき話しかけてきた藤田という青年、言葉の当たりがきつかった。傷付けてしまっただろう。後で謝らなければ。
悪い癖だ。これはもう、病に近い。
ーー薄灰色のタイル。
隠れるようにして壁に張り付いていた3枚目の壁の光源。
ーーこれを壊せばゲームの終わりに一歩近づく。
しかし。
「最悪、だわ・・・」
見つけるには見つけた。ただ、位置が。
常人ではまず届かない、地面から5mも離れた壁にあったのだ。
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