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いつも通りの時間にいつも通りの通学路を歩き、いつも通り、教室に向かう。
「おはよう」
「あっ!おはよーー!!」
僕には友達がいる。勿論、僕は人気者じゃない。それでも、僕には友達がいる。
普通の友達だ。
「慧!こっち来いよ!話そうぜ?」
「あ、うん、今行く!」
「昨日駅前のショッピングモール行ったんだけどさ――」
相手が不快にならないよう、適度に反応し、興味を示す。
そんなことをしていると、教室のドアがガラリと開いた。
途端、教室が静まり返る。
「うわ、来た」
誰かがそう呟いた。
――桐谷真琴。
このクラスの嫌われものだ。
「ほんっと根暗だよなー。テンション下がるわ」
さっきまで一緒に話していた友達も、彼の悪口に話題を転換する。
「言えてる」
言っておくが、僕は悪口に乗る。
最低だって?うん、そうかも知れない。
でも皆言ってるじゃないか。普通じゃないか。
道徳的に考えたら、言わない奴らのほうが正義なんだろう。
でもおかしなことに、この世界ではそう言う奴らのほうが狂人扱いされる。
正しいかどうかなんて関係無いさ。
普通じゃないことも、人数が多く、声が大きい方が普通になるんだ。
この世界の法則だ。
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