第一章 こんにちわ脇役

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「4組の加藤の上履き盗んだの、アイツらしいぜ」 加藤さんは学年一の美人と言われている、この学園のマドンナだ。 勿論、根拠のない噂話である。 「うわ、最悪じゃん」 相槌も忘れない。 別の奴が口を開いた。 「あんなに嫌われて、生きてて楽しいのかね?」 馬鹿か。楽しいに決まってんだろ。 こいつらはまるで分かっていない。 アニメや漫画の世界では、悪口を言われる奴は大体が主人公だ。 正義感の強い主人公が、大衆を相手に自分の信条を胸に立ち向かっていく。 そういうものなんだ。 その時、悪口を言っている僕らは真っ先に悪者だ。 最悪作中で殺されるレベルの。 ――桐谷真琴は主人公だ。 でも、その在り方はこの世界では無意味同然で。 結局、賢い生き方をしているのは僕らの方なんだ。 ほんと、可哀想な奴。
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