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僕等脇役にはルールがある。
悪口は言うが、直接手を下さない。自分たちで勝手に盛り上がって、勝手に冷めていく。
結果的に主人公にとっては人畜無害。
それがモブとしての最低条件である。
そんなことを考えていると、教室がざわついた。
勿論、僕も便乗してざわつく。
入って来たのはこのクラスの悪者、原田大樹だった。
勿論のこと、ゴリラ顔。
そして
――ガン!
入って来るなり桐谷の机にわざとらしくぶつかる。
もはやお決まりだ。
「ってーなー!!邪魔だ変態!!」
原田がそう言うと取り巻きが大きな声で笑う。
周りのクラスメイトもくすくすと笑う。
だから、僕も笑う。
何人かの人は桐谷に憐れむような目を向ける。でも、結局は何にもしないんだから、あれはああいうモブとしての在り方なのだ。
僕の友達は笑っている。だから、僕も笑う。
「お前、加藤の上履き盗んだんだってなー?このオタク野郎!!なんか言ってみろや!!」
そう言って胸ぐらを掴んで見せる。何度目のやり取りだろう。
桐谷は反抗的な目を向ける。
普段ならそれに腹を立てた原田が何らかの罵声を浴びせ、桐谷はそれを無視し、結局原田が一方的に怒鳴り散らすだけに終わるのだが。
「っせーな…」
今日は違った。主役はアクションを起こすのだ。毎日何一つ変わらないのなんて、モブだけだ。
「お前、息くせーよ。脳みそ腐ってんじゃねーの?」
「――っな!!!」
わぉ、それは言い過ぎだ桐谷。
言うまでもなく、大乱闘が始まった。
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