第一章 こんにちわ脇役

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僕等脇役にはルールがある。 悪口は言うが、直接手を下さない。自分たちで勝手に盛り上がって、勝手に冷めていく。 結果的に主人公にとっては人畜無害。 それがモブとしての最低条件である。 そんなことを考えていると、教室がざわついた。 勿論、僕も便乗してざわつく。 入って来たのはこのクラスの悪者、原田大樹だった。 勿論のこと、ゴリラ顔。 そして ――ガン! 入って来るなり桐谷の机にわざとらしくぶつかる。 もはやお決まりだ。 「ってーなー!!邪魔だ変態!!」 原田がそう言うと取り巻きが大きな声で笑う。 周りのクラスメイトもくすくすと笑う。 だから、僕も笑う。 何人かの人は桐谷に憐れむような目を向ける。でも、結局は何にもしないんだから、あれはああいうモブとしての在り方なのだ。 僕の友達は笑っている。だから、僕も笑う。 「お前、加藤の上履き盗んだんだってなー?このオタク野郎!!なんか言ってみろや!!」 そう言って胸ぐらを掴んで見せる。何度目のやり取りだろう。 桐谷は反抗的な目を向ける。 普段ならそれに腹を立てた原田が何らかの罵声を浴びせ、桐谷はそれを無視し、結局原田が一方的に怒鳴り散らすだけに終わるのだが。 「っせーな…」 今日は違った。主役はアクションを起こすのだ。毎日何一つ変わらないのなんて、モブだけだ。 「お前、息くせーよ。脳みそ腐ってんじゃねーの?」 「――っな!!!」 わぉ、それは言い過ぎだ桐谷。 言うまでもなく、大乱闘が始まった。
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