第二章 影踏み鬼子

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ガシャーーーン!! ガシャーーーン!! あちらこちらで壁の壊れる音がする。 もう、死ぬ人はいなくなっていた。 視界の端で、まどかと他の何人かが怪我人を中央に運んでいるのが見えた。 視線を移した先では、皆が自分の衣服、亡くなった人の衣服を壁に向かって投げている。 「………」 僕の周りだけ、時間が止まっているようだった。 僕には何ができるだろう。 何が、出来ただろう。 こんな気持ちの中、前に進まなければいけないのだろうか。 いち早く立ち直った人の方が、環境に適応した人の方が、偉いのだろうか。 生きるべき人間なんだろうか。 今この場から動けずにいる僕は、きっとこの世界にいらない人間。 不適合者なんだろう。 ―――じゃあ、春樹は? 腹すら立たなかった。 ただただ悲しかった。 苦しい。苦しい。苦しい。 こんなに苦しいのなら、いっそ死んでしまったほうが楽だ。 そう思うのに。 こんな感情のままじゃ、死んでも死にきれなかった。 僕には、そんな覚悟すらなかった。 拳を握りしめる。 僕はやるせない気持ちのまま、近くにいた怪我人を中央に運んだ。 まどかと目があったが、気づかないふりをした。
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