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ガシャーーーン!!
ガシャーーーン!!
あちらこちらで壁の壊れる音がする。
もう、死ぬ人はいなくなっていた。
視界の端で、まどかと他の何人かが怪我人を中央に運んでいるのが見えた。
視線を移した先では、皆が自分の衣服、亡くなった人の衣服を壁に向かって投げている。
「………」
僕の周りだけ、時間が止まっているようだった。
僕には何ができるだろう。
何が、出来ただろう。
こんな気持ちの中、前に進まなければいけないのだろうか。
いち早く立ち直った人の方が、環境に適応した人の方が、偉いのだろうか。
生きるべき人間なんだろうか。
今この場から動けずにいる僕は、きっとこの世界にいらない人間。
不適合者なんだろう。
―――じゃあ、春樹は?
腹すら立たなかった。
ただただ悲しかった。
苦しい。苦しい。苦しい。
こんなに苦しいのなら、いっそ死んでしまったほうが楽だ。
そう思うのに。
こんな感情のままじゃ、死んでも死にきれなかった。
僕には、そんな覚悟すらなかった。
拳を握りしめる。
僕はやるせない気持ちのまま、近くにいた怪我人を中央に運んだ。
まどかと目があったが、気づかないふりをした。
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