第二章 影踏み鬼子

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桐谷side 目の前には酷く嫌そうな顔をしたクラスメイト。 互いに尻餅をついたまま固まっていた。 周囲のざわめきが聞こえた。 そこでふと気がついた。 地面が、真っ黒になっている。 かろうじて影の動きが確認できるくらい。 「天井……」 田中が呟いた。 「な、何だよこれ」 真っ黒になった、地面と天井。 驚いて俺が立ち上がると、田中も慌てて立ち上がった。 ズンッという音とともに地面と天井が白色に戻った。 「これ……」 田中の視線をたどると、足元に薄灰色の小さな正方形のタイルが見えた。 意識してみないと分からないくらい、限りなく白に近い灰色。 「さっき虎康が言ってたやつだ」 多分これが、“特定の壁”。 壊れているわけではない。欠けているわけでもない。 でも、地面と天井の色は変わった。 よく分からない、が。 「おい田中。もう一回尻餅つくぞ」 「は!?」 いかにも俺から離れたそうな田中を無理やり引き止める。 「俺らが尻餅付いている間、ちょうど地面と天井が黒くなっただろ?多分このタイルが関係してる。だからもう一回再現するんだよ」 田中は顔をしかめた。 何か言いかけようとしたかと思うと、おずおずとさっきの尻もちの体制をとった。 俺も体制を作ろうと腰をかがめようとしたら、途端、ズンッという音とともに地面と天井の色が黒くなった。
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