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慧side
それなら手分けをしたほうが早い。
そう桐谷に行って別方向にわかれた。
複雑だった。
このまま早くこの恐怖から逃れてしまいたいという気持ちと、僕が生きようとしてよいのだろうかという罪悪感。
皆が皆、一瞬でも速くこのステージをクリアしてしまおうと必死になって戦っている。
僕だってきっと、そうしていた。
春樹がここにいたならば。
どうしても、今ここで僕が春樹の後を追って死ぬことのほうが春樹への償いになるんじゃないかという思いが頭から離れなかった。
立方体の空間。
六枚の壁のうち、地面と天井の二枚は黒くなった。
残りは側面の四枚。
きっと皆気力も体力も限界に近い。デッドラインは長くて二時間と少し。それ以降は多分こっちが持たない。
このままじゃ不味いということだけは、明らかだった。
――探そう。色の違うタイルを。
ゲームが始まってどのくらいの時間が経ったかなんて、正確な時間は僕にも分からない。
投げるものだって、いつ無くなってもおかしくないんだ。
ルークは制限時間はないと言っていたけれど、最初から長期戦は無理だと踏んでいたからだろう。
―――タイルを探すということは、壁に近づくということ。
壁に近づくということは、鬼が飛びかかってくるということ。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
僕はいつ死んだって構わないんだから。
覚悟を決めて一歩踏み出した。
手の震えには気づかないふりをした。
瞬間、ズンッという音とともに側面の四枚の壁のうち一枚が黒く染まった。
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