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虎泰side
ついにというかやはりというか、皆が途絶えることなく布を投げ続けていた壁が黒に染まった。
「やったで!これで三枚目や!!」
喜びと安堵で肩の力が抜ける。
でも、そんな時間も一瞬で終わった。
布を投げていた僕らは、比較的壁際わ付近におったはず。それなのに、僕らの足元にはさっきよりも薄くなった影が見えた。
―――アカン!!
鬼がこちらを振り向く。
「皆!!はよ逃げろ!!」
言い終わる前に、誰かの体が裂ける音が聞こえた。
―――ブチィッッ!!!
――パン!!
―――ビチャ!!!
同時にたくさんの悲鳴が耳に届く。
なんでこんなことになったんやろ。
……僕のせいや。
予想くらいできとったはずやのに。
加藤ちゃんが戸惑う僕の腕を引っ張った。
「藤田君!ともかくあの黒い壁まで走るわよ!!」
引っ張られるがまま、壁ぎわに向かって走る。
――パン!!!
――グチャ!!!
―――ブチィ!!!
しばらくの間聞いていなかった人の死んでいく音が、遠くで聞こえているような、近くで聞こえているような。
「…………」
ダメや、このままやったら。
うろたえとる暇、ないねん。
反省は後や。
「ごめん加藤ちゃん。先逃げとって!!」
「はぁ!?何の計画もなしにどうするつもり!?」
そうやない。
誰がどう考えたって、きっと加藤ちゃんの判断が“正しい”判断なんやろう。
でも。
「僕らが話し合いよる間に、何人も人が死ぬなんて耐えられん!!」
「っ!!」
「………ごめんな」
安全な場所におっとって。
そう告げて走りだす。
誰かが行動を起こさな、この地獄からは抜け出せん。
桐谷君は一人でタイルを探しよるっていうのに。
「―――僕がしっかりせなあかん!」
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