第二章 影踏み鬼子

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虎泰side ついにというかやはりというか、皆が途絶えることなく布を投げ続けていた壁が黒に染まった。 「やったで!これで三枚目や!!」 喜びと安堵で肩の力が抜ける。 でも、そんな時間も一瞬で終わった。 布を投げていた僕らは、比較的壁際わ付近におったはず。それなのに、僕らの足元にはさっきよりも薄くなった影が見えた。 ―――アカン!! 鬼がこちらを振り向く。 「皆!!はよ逃げろ!!」 言い終わる前に、誰かの体が裂ける音が聞こえた。 ―――ブチィッッ!!! ――パン!! ―――ビチャ!!! 同時にたくさんの悲鳴が耳に届く。 なんでこんなことになったんやろ。 ……僕のせいや。 予想くらいできとったはずやのに。 加藤ちゃんが戸惑う僕の腕を引っ張った。 「藤田君!ともかくあの黒い壁まで走るわよ!!」 引っ張られるがまま、壁ぎわに向かって走る。 ――パン!!! ――グチャ!!! ―――ブチィ!!! しばらくの間聞いていなかった人の死んでいく音が、遠くで聞こえているような、近くで聞こえているような。 「…………」 ダメや、このままやったら。 うろたえとる暇、ないねん。 反省は後や。 「ごめん加藤ちゃん。先逃げとって!!」 「はぁ!?何の計画もなしにどうするつもり!?」 そうやない。 誰がどう考えたって、きっと加藤ちゃんの判断が“正しい”判断なんやろう。 でも。 「僕らが話し合いよる間に、何人も人が死ぬなんて耐えられん!!」 「っ!!」 「………ごめんな」 安全な場所におっとって。 そう告げて走りだす。 誰かが行動を起こさな、この地獄からは抜け出せん。 桐谷君は一人でタイルを探しよるっていうのに。 「―――僕がしっかりせなあかん!」
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