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ーービチャ!!
ーーベチャ!!
血飛沫が、白い壁を赤く染める。
嘘やろ。こんな、たった一瞬で。
悲鳴が近づく。
鬼を引きつけてくれていた人達は、もう指で数えられるほどしか残っていない。
半分は殺されて、半分は、逃げた。
生理的な涙が出てくる。
僕がさっさとタイルを見つけんから、こんなことになったんや。
こんなに、犠牲を出してしまったんや。
焦りと罪悪感から、必死になってタイルを探す。
諦めたらダメや。
僕がここで探すこと諦めたら、きっともっとたくさんの人が死ぬ。
たとえ僕が死んだとしても、タイルだけはーー
「ッ!!」
悲鳴が途絶えた。
ビュンッという音とともに背後で何かを振り上げる音がする。
不味い、鬼が来た!!
急いでしゃがんだが、しばらくしても思っていた衝撃はこなかった。
「な、なんや!?」
振り返った瞬間、たくさんの布が僕の視界を覆った。
それと同時に衝撃が走る。
ーー鬼の動きが、止まっとる?
「タイル見つけたら布被せろ!!」
唖然としている僕を呼び戻すように誰かの叫び声が飛んで来た。
ーー布!?壊すだけやないんか!
鬼の隙を狙って、すぐさまその場から抜け出す。
もちろん、布を一つ掴んで。
数秒も経たないうちに鬼が動き始めた。
誰が助けてくれたかは、布に隠れて見えんやったけど、せめてもと思いお礼を叫ぶ。
面と向かって言うのは生き延びた後や。
一刻も早く抜け出してみせる、この地獄から。
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