第二章 影踏み鬼子

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皆んなが皆んな、このゲームを一刻も早くクリアすることに必死だった。 その中で僕は、春樹への罪滅ぼしのように誰かの命を守ろうと必死になっていた。 でもそれは自己満足に過ぎなくて。 確かに壁際に鬼の意識が持っていかれている間に、中央にいる人たちの命を一つでも多く救うことができるかも知れない。 一人でも多く、少しでも遠くへ逃げることができるのかも知れない。 けれどその一方で、僕がこの壁際で時間を稼ごうとすればするほど、犠牲になる人が多く出る。 誰かの命を助けるために、誰かの命を振り落とすことになるのだ。 きっと僕が今するべきことは、時間稼ぎじゃないんだろう。 そのことくらいは、分かっていた。 この悪魔みたいなゲームの中で、命を天秤にかけなければならない状況を強いられるときがあることくらい、分かっていた。 でもそんなの、僕には重過ぎる。 普段走り慣れていないせいで足がもつれる。 ようやく壁にたどり着きそうなところで、鬼が猫目の青年に向かっていくのが見えた。 危ない!!! 届くかどうか分からないような距離だった。 それでも僕は、必死になってまどかからとった布を鬼に向かって一気に投げた。 「タイル見つけたら布被せろ!!」 必要事項を叫んだ後、鬼を引きつけようとそのまま壁に飛び込む。 鬼が猫目の青年に金棒を振り上げた時点で恐怖に襲われたのか、一緒にタイルを探していたらしい人達は皆んな逃げていった。 鬼を引きつけようとしていた人たちも、もういない。 ーーよかった。 僕は臆病だから、 他人の命を正しく取捨選択できるような心臓は生憎持ち合わせていない。 春樹は死んだ。もういない。 僕の人生なんて、お先真っ暗だ。 それくらいなら、ここで死んでしまった方がいっそ楽だろう。 だから僕は、死んでもいい。 どうせ命を天秤にかけるなら、はかりに乗せるのは、 僕と、それ以外の人だ。
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