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真実
私の本当の母、紗良(さら)は私が3歳の時、父親の私への虐待がエスカレートしていくのを見て、このままでは私の命が危ないと思い、父が就寝したことを確認してからその胸に包丁を突き立てた。
即死だったらしい。
情状酌量の余地はあったが、母は一切の釈明をしなかったために実刑判決が下った。
その時、母が私を託したのが祥子だったのだ。
以上が手紙の内容だった。最後の1枚には、現在母が入所している場所が記されていた。
それで今、こうして実の母に面会に来ている。
私を守った母を責めるなんてとんでもない。寧ろ私の為に自由を奪われてこんなところにいる母に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
あなたのお陰で私は今、こうしてまだ生きているよ。
姿を見せる事でそれを伝えたかった。
面会を終え、私は祥子の言葉を思い返していた。
「サラダよ」
あれは実は「紗良だよ」って言ってたのだ。
もちろんそうと悟られ無いように、サラダを食べながら。
「サンタさんよ」
それも実は「三田(さんた)さんよ」って言っていたのだ。それが父の名字だった。
私を守ってくれた母と、私に一度たりとも嘘をつかなかったママ。
どっちも私の誇りの母親だ。
出所を目前に控え、一度面会に行こうと母の元へ向かったママ。
先日ニュースでも大きく取り上げられた飛行機事故。
不幸にもそれに乗っていたために、ママはもうこの世にはいないけれど。
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