2つの嘘

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「うふふ、サラダよ」  私が5歳の時だった。私のママ、祥子に赤ちゃんはどこから来るの?って聞いた時の事。 「赤ちゃんはね、コウノトリさんが運んでくるの」 「じゃあ、私もコウノトリさんが?」 「うーん、京子ちゃんはちょっと違うんだよね」 「じゃあ、私はどこから来たの?」 その時の祥子の答えがサラダだった。    思えば祥子は私に嘘は付いたことがなかった。 微妙に怪しい時もあったはあったが、最終的には 「ね、嘘じゃなかったでしょ」で済む程度のものだった。    もうひとつ、明らかに嘘だと思ったやり取りがある。あれは私が9歳の時だ。  幼心に母の手一つで苦労しているのは解っていたので、中々聞けなかったことをその時ぶつけたのだった。 「私のパパは誰なの?」 「サンタさんよ」  明らかに胡麻化していると悟った私はそれ以上聞かなかった。  家に仏壇がないことから、死別では無いこと位は分かっていたのだけど。  居歩(いあるき)女子刑務所の面会室。、25歳になった私を見て、ガラスの向こうに座った母は泣きながら 「ごめんね、私のせいで、ごめんね」と、いつまでも謝っていた。  別にあなたは悪くない。そう言おうと思ったけど、今はやめておこう。  それはここを出る日にでも、そう思ったからだ。
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