エピローグ ~笑わぬ妃~

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 声を弾ませて振り返ると、予定していたビジネス会談を終えたタカトラさんが、ドアから顔を覗かせていた。 「これはこれはご当主様。  では、ワタクシはこれにて」  一礼の後、先生はそそくさと退室していった。  入れ替わりに彼が、ストンとベッドに腰かけた。 手には何か、大きな筒を持っている。 「絞られたか。 まあ、割りとサマになってきた」 「うう…… 毎日スケジュールがびっしりで、凄く厳しいんですが……」 「ははっ、そんなもんさ、そのうち慣れる。  それよりも……ホテル暮らしで不便をかけるな。  見ろ、さっき業者から渡された」  彼が私を手招いた。嬉々として傍らに腰掛けると、手にした筒から図面を取り出し、ベッドの真ん中に広げた。  前に言っていたとおり、彼はあの古い屋敷を取り壊して、最新式の大邸宅に建て替える事を決めたのだ。 「うわあ、沢山のお部屋。……ん?」  図面をよく見ると、小さく名前が書いてある。  私達にレイカさん、将馬さん、お婆ちゃんやうちのお父ちゃん。そして、弥一郎様に…サヨリさんまで!
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