ファースト・キス

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「エーーーッ!!  むむ、無理ですよっ、私がレイカ様の身代わりなんて」  案の定、猫撫で声での頼み事はろくな事ではなかった。 「しーーっ、声が大きい!」  レイカ様は口元に指先を当て、キョロキョロと辺りを見渡した。  誰もいないのを確認すると、声を落として話を始める。 「どうしても出たくないのよね…  四葉ちゃんは、それっぽく見える格好で『藤城レイカ』の席に座っているだけでいいから… ね、お願いっ」  レイカ嬢は両手を合わせ、頭を低く上目使いで私を見上げている。 「で、でも……私とレイカ様じゃ、見映えが全然違いますよぉ。大体、私にだって当日のお仕事が…」  化粧で誤魔化せる顔はまだしも、スーパーモデル体形のレイカ様と、旧き純和風体型の私では、何もかもが違いすぎる。 「だぁいじょうぶ!  アサダにちゃんと言っとくから。  アイツら皆、どうせ娘の顔なんて覚えてないもの。頭数だけ揃えればいいんだからさ、ね、ね?バイト代もいっっぱい出すから!」  レイカ様は、その後もさらにごり押して、渋る私に半ば強引にそれを承諾させた。 「うう……  し、しかしですね、それには大きな問題が一つ…」  恥ずかしくって、私はモジモジと下を向いた。  彼女が怪訝そうに首を傾げた。 「? 何よ」 「あの……」  そう、私は哀れなシンデレラ。  パーティに________ 「着ていく服がありません」 「あー……そう」  意地悪姉さん、レイカ嬢は天を仰いだ。
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