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「まあいいわ。ドレスはこれで妥協しましょうか。
さ、次はメイクよ、そこ座って」
「えー、いいですよ。そんなのパパッとやりますから。何もそこまで拘らなくても…」
「ダメ!安物使ってると、お肌にだって悪いんだから。
それに…今夜はバカ兄貴もくるのよ。
アイツにいいとこ見せたいんでしょ?」
「えっ」
ギクッと顔を強張らせた私に、彼女はキラリとウィンクした。
「あ、あのっ…」
「ささっ、いいから。座って座って」
彼女は、すっかり固まってしまった私をグイグイ引っ張って、ドレッサーの椅子に座らせた。
そうして何やら嬉しそうに、大きなパレットで綺麗な色を練り始めた。
鏡の前で、刻々と変わっていく自分の顔を見つめながら、私は別のことを考えていた。
ううっ、何でレイカ様が知ってるの?
フツーの兄妹ならいざ知らず、口もきかない藤城課長から聞くわけないし…
私ってば、そんなに顔に出てるかなぁ…
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