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小一時間後。
「こっ……これが私?」
長い睫毛に、薔薇色の頬。
ダイヤのピアスにプラチナのネックレス、細緻な金のヘアアクセサリーで飾り立て、別人のようになった姿を見て、私は思わず目を輝かせた。
「ふふふっ、ハッキリ言ってものすごく苦労したわ。でもこれで、どこからみてもお嬢様に見えるわよ?」
額の汗を拭きながら、レイカ嬢は満足そうに頷いた。
「…スゴイ…うっわぁ…」
いつまでも鏡を眺め、すっかり浮かれている私を見て、ニコニコ笑っていた彼女が、ふと時計を見上げた。
「じゃ、私そろそろ行くわ。
あとはヨロシクね」
レイカ嬢は、足早に館を去っていった。
ちなみに、アサダさんが例の衣装を持って、朝から将馬サマを探し回っていたが、彼もまた逃げたらしい。
全く、この家の人達は…
開始の30分前、6時には私は「藤城レイカ」の席に着いた。
顔バレしやしないかなあ…
さっきから不安でしかたがないが、不思議なことに同テーブルに着いた人達は何も言わない。
どうやら彼女が言ったように、彼らは席さえ埋まっていればいいらしい。
そういえば、藤城課長の姿がない。
昨日からずっといなかったから、身代わりの話もしていないし、もしかしたら怒られるかもしれないけど…
この姿で会えるのは、少し楽しみだったりする。
ふふっ、藤城課長、見たらびっくりするかな。
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