ファースト・キス

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 彼は優雅に微笑みながらも自信に満ちて背すじを伸ばし、凛としてそこに立っていた。   「皆に紹介しておこう。 息子の貴彪だ。近々私の後継者として、近々グループ経営を学ぶ事となるだろう。若輩ゆえ、皆の助けを借りることも多かろうが、ひとつ厳しく鍛えてやっていただきたい」  周囲が俄にざわめいた。  へへ~んだ、私は知ってるモンね。  オヤブンの晴れ舞台。  私は不思議と誇らしい気持ちで、ザワめく周囲を見渡した。  が_______ 「それと、もうひとつ」  弥一郎が顎を上げると、絢爛たる振袖の小柄な女性がスッと席を立った。  裾を気にしながら壇上に上がる彼女の手を、藤城課長が気遣わしげにとり、傍らに立たせる。 「ここに京極家の次女、瑠璃子さんとの婚約を発表し……」  弥一郎が宣言すると、居並ぶ二人に盛大な拍手が起こり___  私は現実を突き付けられた。    京人形のような長い黒髪に、透けるように白い肌は、絵にかいたような深窓のお嬢様。  一見頼りなさそうな鈴を転がすような声で、なのに不相応に場馴れしたおっとりとした京言葉で、来客にしっかり挨拶をする。 『俺と同じように遊んでる』  前に課長が言っていたけど、そんな風にはとても見えない。  藤城課長とよく似合う。
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