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私は藤城課長の胸元をポカポカ叩き、想いっきり八つ当たりした。
笑いたければ笑えばいい。
怒りたければ怒ればいい。
この、ヒトデナシッ!!!!
しかし___
彼は、そのどちらもしなかった。
散々喚き散らした末、疲れて息を切らした私を見下ろすと、強張った声で私に問いかけた。
「口先だけの同情に…一体何の意味がある」
「そ、そりゃあ…」
無機質な声。私は一瞬言葉に詰まった。
「確かにそうですけど。
でも、せめて…
優しい言葉だけでも欲しいのが、人ってもんじゃないんですか?」
叩く手を止め、俯く私に彼はさらに低い声で尋ねる。
「そんなに嫌なら、何故、何とかしようとは思わない?」
「……私だって。
出来るものなら……何とかしたいですよぉ…」
「………」
身体の力が抜けていく。
もう立つ気力もなく、とうとう彼の足下にへたり込む私。
と、静かな声が私の頭の上に落ちてきた。
「……何とかしてやろうか」
え…今、なんて?
ピクリと肩を震わせた私に、彼はもう一度、今度は大きな声で告げた。
「顔を上げろ。
お前がそれを望むなら、何とかしてやろうと言ったんだ」
「で、でも…」
おずおずと顔を上げた私の間近にしゃがみこみ、彼は私の瞳を覗き込んだ。
「確認する。
お前はそれを、何としてでも避けたいんだな?」
私はコクコクと頷いた。
「は、はい。それは勿論、猫の手にもスガりたいです!」
「色々と違うが…まあいい」
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