ファースト・キス

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 さっき婚約を発表したばかりの癖に、課長がいるのを分かっていて、わざと見せつけている。  こんなのって酷いじゃないか!  許せない、私は無性に腹が立った。  ご主人様を『侮辱された』と思った。   「カチョー、私ちょっと行ってきます!」  私は肩を怒らせて、今にも掴みかからんと暗闇に突進した。  が、 「待てっ、四葉」  ショールをグイッと引っ張られ、敢えなく彼に引き戻される。  彼は、落ち着き払っていた。  フー、フー…  まだ興奮している私に、まるで他人事みたいに冷めた口調で語り出す。 「いいんだ……別に気にしてない。  そうだな、確かにオマエの言う通り 『遊んでる』は語弊があった。  彼女、ずっと昔っからあのお付きの男に恋をしていてな… 『死んでも貴方とは結婚はしない』 と、何度も言われ続けている。 ああ見えて、案外頑固なお嬢様なんだ」 「でも…そんなのって…」    まだ納得出来ないでいる私に、彼は “いいや” と首を振った。 「いいんだ。  それより…四葉…こっちへおいで」
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