ファースト・キス

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「?」  藤城課長が珍しく優しい声で私の名を呼んだ。  これまで見たこともない蕩けそうな笑顔に、私はついつい引き寄せられる。 「今夜のお前は…可愛いな」  そして___ 「かちょ……お……」  彼が私の手をぐいっと引きよせた瞬間。    柔らかいものが、私の唇を塞いだ。 「ん……四葉…」  心地よさげに囁いて、唇を舌先でなぞり始める。 「や…」  胸を突いて離れようにも、強い力で抱き締められる。 「本当に…可愛い」  甘い囁きとともに、ヌルリと舌先が唇をこじ開けた。 「はっ…っ…」  驚きと恐怖に私は、咄嗟に舌に噛みついた。  しかし彼は、お構いなしに後ろから首を掴むと、更に強く顔を押し付け、貪るように深く口腔内を侵しだす。  血とアルコールが混ざった味。  息もつけない強引なキス______ 「ふ…うあ…や…っ」  苦しくって、思わずドンドンと背中を叩くと、ようやく顔を離してくれた。 「な、何を……するんですかぁっ」  涙目で彼に抗議する。  しかし彼は、キョトンとした表情(かお)で首を傾げた。
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