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「どうして怒る?」
「あたりまえじゃないですか!
…私の…初めてのキスを…こんな」
当て付けみたいに奪われて。
しかし彼は、心底不思議そうに尋ねた。
「だってお前、俺が好きだって言ったじゃないか。
嬉しくは……ないのか?」
ああ、この人は________
本当に分からないのか。
悲しい怒りが私の心を支配した。感情の昂るまま、私は彼に詰め寄った。
「ええ、好きですよ?好きですともっ!
でもね…
ううん、だからこそ。
こんなのは嫌なんです!!」
バシッ。
気が付けば私は、後先も考えずにあの恐ろしい藤城課長の頬を張っていた。
“シモベ” に不意打ちを喰らわされた彼は、なおもポカンと私を見ている。
「う、う、うわーーーーん!!」
私はまたもや号泣とともに、走ってその場を逃げ出した。
慣れぬヒールの片方をその場に落として。
張られた頬を押さえながら、呆然と佇む藤城貴彪の真っ直ぐな問いも聞かないで。
「何故、打(ぶ)つんだよ…」
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