弟の誘惑

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「落ち着いた?」  コクリと私は頷いた。  彼が来てからまだ数ヶ月、私はまだ、そんなに親しいわけではない。  だけど彼はとても聞き上手だったから。  いつの間にか私は、さっきの出来事やこれまでの身の上話、その他ごちゃまぜの感情を、そのままぶつけていた。  それでも、  支離滅裂な私の話にウンウンと頷き、宥めながら聞いてくれる彼に、いつしか私は完全に心を開いていた。 「ふうん、兄さんに借金ねえ。  それで住み込みってワケか。今時珍しいとは思ってたんだよ」 「ハイ、最低4年はかかるかと」 「ハハッ、4年もここで奉公なんて……ゾッとするなあ」  ブルッと震えた彼に、私は熱弁した。 「そうなんですよ!  とんでもないブラックで、お正月の時なんか過労で倒れたくらいですよ」  そうだよ。  そういえばあの時、私はカチョーに運んでもらったんだよね。  それから…  ふと思い出していると、彼は腕組みをして考え込んでいる。 「1500かぁ…それは中々厳しいね」 「あ、ハイ。そうなんです…」  サスガはこの人も商人の子だ、頭の中ですぐに算盤を弾いている。
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