弟の誘惑

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 その一言で、私は一気に現実に引き戻された。 「君のことはさ。  初めて会った時から…ずっと気になってたんだ。  ……なかなかにスペクタクルな出会いだったし」 「え」  えーっと…  アホのようにポカンと口を開け、見上げた私に、彼は「ね?」とウィンクした。  タダでないとは思っていたが。  今まで殆どモテたことのない私が、急にそんな…  つい打算的に考える。  条件としては……悪くないよね。  顔は藤城課長とソックリの美形で、重たい地位や責任を背負わない次男。  性格だって、カチョーみたいなドSの俺様とは違う。優しくって、人あたりのいい聞き上手。  ちょっと軽くてエッチっぽいのが気になるけど、それくらいが私には、ちょうどいいのかもしれない。  それに… 「付き合ってみて、気に入らなかったら、すぐに別れてくれていいよ?  無理強いする気はないからね」    またとない条件。  私の心は揺れに揺れた。   しかし……  ここで私ははたと我に返った。  躊躇う理由がひとつある。  それも、強力に重たいものが……
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