弟の誘惑

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 と、それまで終始ニコやかだった彼から、急に微笑みが消えた。  みるみるうちに端正な顔が歪んでいく…  と同時に彼は、私の両肩を強く掴んだ。 「イタっ……し、将馬サマ?」    先程とは打って変わった憎悪の眼差しで、冷ややかに私を見下ろすと、彼は抑揚のない低い声で囁いた。 「止めとけよ。  貴彪はな、父親と同じ。心を無くした人間さ。  さっき君も嫌というほど分かっただろう?人を傷つけても、ムゴいって感覚がまるでない。  君の気持ちをいいように利用しても、それで君が傷ついたなんて思ってない。  寧ろ嬉しがってると、そんな風に考えている人間。  君が不幸になるだけだ」 「っ…」  グイッと肩を引き寄せる。  怖い顔で、真正面から私を見つめているのは、彼の人と同じ、色素の薄い黄金色の瞳。  瞳に吸い寄せられるように、私は彼に魅了された。  確かに  そうかもしれない。  諦めと恭順。  私はうっすら瞳を閉じた。  満足そうな彼の顔が、ゆっくり私に近づいてくる。  それをボンヤリと見つめながら、抗うように頭の隅では別のことを考え続けた。  本当に  それだけだろうか______
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