弟の誘惑

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 借金取りから私を救ってくれた彼、不器用に介抱してくれて、お粥まで作ってくれた彼……  もしかすると藤城課長は、自分でも気がつかないうちに、欠けてしまった何かを索しているんじゃないだろうか。  子供時代に置き忘れた、本物の…  私ははっと目を見開いた。 「ゴメンっ、将馬様。  やっぱり私……頑張ってみます。  たくさん愚痴を聞かせちゃってゴメンなさい。  でも、お陰でまた、元気になれました」   私はスッと彼から離れると、ニコッと微笑んでみせた。  しかし。 「______もう、遅いよ」 「え…」  あっという間の出来事だった。  彼は強い力で私を己に引き寄せて、その勢いで押し倒し、身体の上に覆い被さった。  ゴツッ。  引き出しの角にぶつかった鈍い音が聞こえる。 「…イタタ。  や、やだなあ~、ジョーダンきついっすよぉ。さ、退いて下さい、将馬サマ」  冗談めかして言った私に、彼は冷ややかに告げた。
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