4704人が本棚に入れています
本棚に追加
借金取りから私を救ってくれた彼、不器用に介抱してくれて、お粥まで作ってくれた彼……
もしかすると藤城課長は、自分でも気がつかないうちに、欠けてしまった何かを索しているんじゃないだろうか。
子供時代に置き忘れた、本物の…
私ははっと目を見開いた。
「ゴメンっ、将馬様。
やっぱり私……頑張ってみます。
たくさん愚痴を聞かせちゃってゴメンなさい。
でも、お陰でまた、元気になれました」
私はスッと彼から離れると、ニコッと微笑んでみせた。
しかし。
「______もう、遅いよ」
「え…」
あっという間の出来事だった。
彼は強い力で私を己に引き寄せて、その勢いで押し倒し、身体の上に覆い被さった。
ゴツッ。
引き出しの角にぶつかった鈍い音が聞こえる。
「…イタタ。
や、やだなあ~、ジョーダンきついっすよぉ。さ、退いて下さい、将馬サマ」
冗談めかして言った私に、彼は冷ややかに告げた。
最初のコメントを投稿しよう!