課長の正体

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 とは言え…… 「カチョー、一体どうやって……」 「質問は許さん。まず、契約書を出せ」 「はっ!」  有無を言わさぬ命令口調。  契約書、契約書…あった、昨日からバッグに入れっぱなし。  中身を取り出すと同時に、彼は私の手からそれを奪いとると、それをサッと一読した。 「ふうん…、なるほどねぇ。  …………… ヤミ金の連絡先は」 「え、連絡先に登録してありますけど。 カチョーは一体何を…」 「質問は許さんと言ったはずだ。貸せ」 「ははっ」  ロン毛の連絡先を表示したスマートフォンをさっと差し出す。  すると恐ろしいことに彼は、相手に電話をかけ始めた。 「あ~…もしもし。何?  『誰だてめえは』だと。俺だ!  言葉に気を付けろ。  ……………ああ、だから金を返してやると言ってる。  何、『出来るのか』って?  いいから来い、10分で来い。取りっぱぐれるぞ!」  凄い剣幕で電話を切ると、ホイと私の手にそれを戻した。  う、うわあぁ、何てことしてくれたんだ!   「カチョー、あの、もう少し穏便に…でないと私」  本当の海に沈められちゃう。    不安で堪らない私は、恐々彼に頼みこんだ。  しかし彼、さっきの憤怒はどこへやら、平然として目の前の料理をつついている。 「黙れ。『全て任せる』約束のはずだ。  次言わせたらただじゃおかないからな」 「……ガッテンショウチ」  ひいっ、やっぱりこの人コワイ!
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