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オタオタと慌てている私を、彼はフッと嘲り笑った。
「か…ちょ…」
ゾっとした。
その瞳に、いつもの酷薄な光が戻っていたからだ。
彼は自分を嘲るように吐き捨てた。
「俺はな……母の替わりとあてがわれて、14の時から女を抱いた。
以来、女の愛しかたは…一つしか知らない」
「そんな…」
将馬サマの言ったとおり。
完璧にみえる彼は、決定的な何かが欠けている。
うまく言葉にできないが、それは暖かかったり、優しかったり、じわりと胸を切なくさせる何か…
これは直感____
その、抜け落ちた部分を探すために、彼は今、私を必要としているんだ。
彼が私を必要としてくれるかぎり。
たとえありふれた野の花だとしても私は、彼の心の一隅を彩る小さな花くらいにはなれるのかもしれない。
そして、もしそうありたいと願うなら、彼と接点を繋ぎたいなら。
彼の流儀に
飛び込んでいくしかなさそうだ。
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