藤城課長の嫉妬心

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藤城課長の嫉妬心

 春_____  会社は年度変わりの時期だ。  幸か不幸か、私は何とか会社員2年目に突入した。  OLとメイドの2重生活。  くぅっ…  思えば長くて辛い道のりでした。  まだ終わってないけどね。    あれは2月の終わりのこと、 「藤城グループ総帥 藤城弥一郎 生誕70周年記念パーティー」  の夜。  あろうことか、私は当社グループの次期総師、藤城貴虎と、何と一線を越えてしまった。  以来、2人の関係は何事も無かったように……  ではなく、大きく変化した。  深夜、自分しかいないはずの真っ暗な部屋で、ヒタヒタと足音が聞こえてくる。  気配を察知した私は、フトンの中で身を固くして待つ。  すると、上からそっと大きな影が覆い被さってくる_________  バサッ。    私は掛け布団を跳ね上げると、呆れ顔で彼を見上げた。 「あのねカチョー。これっていわゆる “夜這い” じゃないですか」 「人聞きの悪い。通い婚とでも言ったらどうだ。ホラ。昔、平安貴族とかがやってたやつさ」  彼は優雅に微笑んだ。  成る程。  モノは言い様ということか…    納得しかけて、私はハタと気が付いた。  いけない。  一瞬、いいくるめられそうになってしまった。   「大体ね、このベッドじゃ2人で寝るの大変でしょ?  ご自分のお部屋にはキングサイズのベッドがあるのに、貴方はいつも縮こまっていて…」 「へーえ、お前が俺の部屋に来てくれても、俺は構わないんだがな。 …他の奴等に聴かれていいなら」 「ぐっ。し、しかしっ……」 「もう黙れ、お前と喋ってると、ソノ気が失せる」 「ん…ぁ……」
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