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花は爛漫、春の陽気に2人並んで昼食を採る。
どことなくほのぼのとした空気は、香河先輩の持つ雰囲気そのものだ。
が、にこやかに談笑していたさ中。
「あの……四葉ちゃん、大分前の話なんだけどさ…」
香河さんが、少し言いにくそうに切り出した。
「はい?」
「あの……前の返事さ。
そろそろどうかな、家の方…良くなった?
近頃残業オッケーみたいだしさ……」
「あ…」
スッカリ忘れていた。
昨年度のクリスマスの頃。
入社した時から密かに憧れていたこの先輩に、私は奇蹟のような “コクハク” をされたのだ。
しかし、藤城課長に交際を禁じられた私は“家が厳しい”と嘘をついて断った。
モッテモテの香河先輩のこと、私はすっかり、それで終わったものと思っていたのだが…
「あの時の返事、俺はまだ保留だと思って待ってるんだけど」
「う……あの、え~っと…」
しどろもどろに口ごもる私に、香河先輩は優しく問いかけた。
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