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「好きな人でも……出来た?」
私はハッと顔を見上げた。
彼は、言い澱む私に助け船を出してくれたのだ。
躊躇いながらも私はコクリと頷いた。
「そっか。何となく、そんな気はしてたんだ…」
彼は、少し寂しそうに天を仰いだ。
対する私は、申し訳なさいっぱいに地を見下ろす。
と、彼がふっとこちらを向いた。
「ひょっとしてソレ…藤城課長、じゃないよね?」
うえっ!?
図星をつかれ、私はギクリと顔を強張らせた。慌ててそれを否定する。
「な、なわけないですよぉ…だってカチョーは…」
「ハハハ…。
だよな~、な訳ないよな。
何て言ったって、次期総帥だぜ?俺達とは世界が違う」
「………」
分かってはいるつもりでも、改めて他人に言われるとその言葉は心に刺さる。
そんな私の小さな胸の痛みなど知るよしもなく、笑いながら彼は続けた。
「イヤね、マツヤマさんが妙な事言うんだよ……君と課長の息が妙にあうだとか、アイコンタクトで会話が成立してるとか…」
「ま、まっさか!」
私と課長の、ちょっと複雑な事情は課にはもちろん伏せたままだ。
しかし、あれだけ長く一緒にいて、お世話をし続けていれば、端からはそう見えるのかも知れない。
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