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「ところでキブンちゃんは、どうなのよ」
「そうだよお前、開発の高畑さん、振ったらしいじゃん」
「ウッソまじで?」
驚いた私は、思わず足を止めてしまった。開発の高畑さんといえば、誰もが憧れる高嶺の花、ハイミスだが、超絶美人のキャリアウーマンだ。
「好きな人いるもん。
今日……振られちゃったけどね」
にわかに、輪の中にどよめきが起こった。
エ~~、ウソ~~。
誰だよそれ、言えよ~~。
周囲が囃し立てるのを、彼は笑いながらはぐらかすも、そのうちの何人かが、なおもしつこく訊いている。
「…困ったな…」
ざわめきがやがて手拍子に変わる……
マズイ!
私は急いで席を立とうと、右手をついて腰を上げた。
が、その手がにわかに強い力で握られて、私はそこを動けなくなった。
ウソ……
チラッと右隣を窺うと、一瞬、淀んだ酔眼が私を睨んだ。
「……分かった、分かった。言うからさ」
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