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ああ、殴られるっ!
ギュっと眼を瞑った時、控えていたロン毛がその手を止めた。
「止めな、カズ(スキンヘッドの名前らしい)」
彼は、スキンヘッドと課長の間に割り込むと、とってつけたような猫なで声で言った。
「なあ兄さん?
アンタが今から2000万支払うっつーから、わざわざこっちから出向いてやったんだ。
あんまり舐めた口聞いてると、こっちにも考えってもんが…」
「まあ、落ち着け。
急ぐ乞食は貰いが少ないっていうぞ」
「んだと、貴様っ!」
激昂するスキンヘッド。
それを尻目に藤城課長は、サイフからまっ黒なカードを取り出した。
「生憎、現金は持ち合わせてない。
カードでいいか」
「はあ?なに気取ったコト言ってんだ、このっ」
「ま、待て!」
今にも拳を振り下ろそうとしたスキンヘッドをロン毛が慌てて止めた。
「そ…それはもしや……世界に400万枚しか出回っていないという…ホンモノのお金持ち専用『セブンヒルズカード』…
カズ、止めねえか!」
え?ナニソレ。
課長の背中で驚く私。
「へへへ…コチラは金さえ頂ければ文句はねえんで…」
ロン毛は急に態度を改め、もみ手で課長に擦り寄った。
と、用紙にサインをしかけた課長が、急にピタリと手を止めた。
「おい兄さん…2000万、だったっけか?」
「へい、2000万でございます」
藤城課長は腕組をし、何食わぬ顔で天井を仰ぐ。
「おかしいな…さっき契約書類を確認したんだが……若冠計算違いがあるし、法定金利も越えているように思えたんだが」
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