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片付けを終えて大方が次に向かった後、誘いを断った私は、トボトボと一人小路を帰っていた。
夜の公園からは、まだあちこちから楽しそうな笑い声が聞こえている。
ヒュウッ。
ついぞ起こった一陣の風に、桜の花びらが一斉に舞った。まるで、今の私を責めるように。
…今日の私、悪かった。
あんないい人を傷つけてしまったのも忘れて……前みたいに後輩気分で甘えてた。
彼があんまり優しかったから。
彼は多分、私の相手が課長だって気付いてた。
なのに私がキチンと言わずに誤魔化したから…
だから、似合わない悪口を言ったんだ。
香河さんは怒ってた。
さっきあんなコトしたのは……
私への……ささやかな報復だ。
自己嫌悪でいっぱいのまま、石の階段を降りきった時だ。
公園の入り口に、見慣れた顔が待っていた。
「あ、あれ? 藤城……課長。
次行かなかったんですか?」
鼻をすすり上げながら顔を上げると、彼は私の手を取った。
「ちょっと来い」
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