4705人が本棚に入れています
本棚に追加
躊躇いつつも、私は彼の傍らに身を寄せた。
ドキドキしながら彼のネクタイを緩めていく。
私を真っ直ぐに見下ろす目は、私の所作に少しの躊躇いも許さない。
震える指でシャツのボタンを外していく。
第1ボタン、第2ボタン…
肌けた胸のシャツの上から、怖々唇を寄せ、そこで動作をピタリと止めた。
「…やっぱり…出来ない」
「言葉だけでは、信用出来な…」
窮鼠はネコを、いやトラを噛む。
追い込まれた私は……
キレた。
「違~~~~う!!」
私は彼の耳のすぐそばで、高校時代に剣道部で鍛え上げた、つんざく大声で叫んだ。
唖然とする藤城課長。
その隙をつき、私は更に彼の耳を引っ張ると、直に口を当てて畳み掛けるようにいい放った。
「だから、
貴方のそういうトコが怖いってんです!
出来ないモノは出来ないの、恥ずかしいの、無理なの、私は全っ然経験が足りてないの。
いい加減に、その無茶振りはヤメなさーーーい!!!」
最初のコメントを投稿しよう!