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数分経過。
「ミミがイタイ」
「……スミマセン」
再びソファに座り直した我々。
彼はぐったりと私の膝に頭を乗せて横になり、私は耳のあたりを撫でている。
こんなときの彼は大人しく、されるがままになっている。
私は彼に諭すように言った。
「あのね、カチョー。
ハッキリ言って貴方、怖くないかと言えば…怖い時もあります。ってか、殆ど怖いです」
「…そうか」
「でもね、人にはどうしても纏(まと)う雰囲気ってもんがあると思うんです。
貴方は人を統べるお方、それはきっと必要だから身に付ていったものなんでしょう。
だけど私は…」
一呼吸置く。
「そうじゃない時も、いっぱい知ってます。…例えば……小さい時の話を聞かせてくれた時、看病をしてくれた時。
い、一緒に寝てる時とかも…」
彼が顔を上げて、私を見た。
私は少しだけ視線をずらし、思いきって告げた。
「だから……今日はいっぱい、
う~……あ、愛して…くれますか?
私も何とか…その努力はしますから」
その笑顔はかなり引きつっていたし、不気味だったかもしれない。
だけど彼は、ホッと顔を緩ませた。
ほんの少し躊躇った後、私はその頬を片手で覆った。
そして。
その夜初めて、私から彼にキスをした。
彼から教わった通りに、唇をなぞって割り開く。
まだ不馴れな、ぎこちない動きに彼は優しく合わせてくれて…
やがては主導権を奪い、さらにそれを深くしていった。
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