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驚いたことに、この春3回生になった彼女は、これまでの素行を改めたようだ。
近頃は遊び歩く気配もなく、本当に資格試験の勉強をしている。
私の名前も覚えてくれた。
嬉しいのは、2人で追いかけっこをしている様子が、仲の悪かった兄妹のキョリが少し縮まったように感じること。
カチョーには悪いが、一人っ子の私の目にはこの上なく眩しい光景に映っている。
そしてもう一人、
弟の将馬様だが…
こちらは相変わらずの冷たい反目が続いている。
けれども、最初の頃はすぐに出ていくような気配を見せていた彼が、今ではすっかり居着いている。
私にはいつも、
『美咲チャンが居るからさ。
どう?そろそろ乗り換えたくなってきた?』
なんて、冗談混じりのリップサービスをかましてくれている。
「何を企んでいるか、分かったもんじゃない」
と、藤城課長は毛嫌いしているが……
あんな事があった後も、私はどうしても彼が嫌いになれない。
女子としては少しカナシイが。
私は、他人と比べて自分が特別魅力的だとはどうしても思えない。
そう、結局あれはオモチャの取り合い、兄弟喧嘩の延長線。
過去の確執はあったにせよ、2人は血を分けた兄弟なのだから。
私としては、彼等がいつか手に手をとって仲良くなったらいいのにな、なんて身勝手に望んでしまう。
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