課長の正体

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「あっしたぁ!」  2人は、サイン入りの証書を受け取ると、転がるようにその場を立ち去った。 「フン」  冷ややかな笑みを浮かべつつ、彼はグラスに口をつけた。  一方、課長の背中で一部終始を見守っていた私は、すっかり夢見る乙女と化していた。  う、ウヒャアアアァ。  か、カッコええええっ!!  最早私の脳内は、ピンク色の空想でいっぱいだ。 《以下、脳内寸劇》 『お嬢さん、お怪我は?』 『は、はい…あの、危ないところを助けていただいて… あの、せめてお名前を!』 『いいや、名乗るほどの者じゃない』  まさかそれが、  2人の運命的な出会いになるなんて_____  冷酒に口をつける端正な横顔に見とれていると、 「ん、どうした?」  視線を感じたのか、彼がふと私を見上げた。 「い、イヤ~。  カチョーって、実はスッゴイお金持ちだったんですね~」  本当は “カッコ良かったです(はーと)” とでも言いたかったのだが、さすがに羞恥心が邪魔をした。  ところが、それを聞いた藤城課長は、驚いたように目を見開いた。 「は?何オマエ。まさか…知らないのか」 「ほぇ?と言いますと」 「______俺の名前は?」 「藤城(とうじょう)課長」 「会社の名前は?」 「フジシロコーポレーション。それが?」 「だ~か~ら!」
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